貴志祐介|「悪の教典」を読んでみた。
2013/06/19
少し前に劇場化もされた、「悪の教典」を読んでみました。
映像化される前から上巻は持っていたのですが、下巻を持ってなかったので、揃ってから読もうということで今に至ります。
悪の教典
あらずじ
晨光学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。しかし彼は、邪魔者は躊躇いなく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。学校という性善説に基づくシステムに、サイコパスが紛れこんだとき―。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー傑作。
上巻
意にそぐわない人間・動物などをいともあっさりと殺し、自分の地位を安泰とするという
サイコパスとかマッドとかいう言葉がぴったりな英語教師、蓮実(通称ハスミン)を巡る物がりなんですが、上巻はアレですね、久々に胸クソが悪くなる内容。
蓮見の過去を読むにつれ、怖すぎる。
上だけで何人が死んだというか、殺されたんだ?
生まれながらのクレバーすぎる殺人鬼ってのはこういうヤツなんだなと納得させられてしまいます。
子供時分の心理テストのくだりである、
ふつうなら、どんなにIQの高い子供でも、テストの背景まで忖度することはないが、聖司が真に天才たるゆえんは、このときにすぐ、こう考えたことだろう。
彼らは、いったいなぜ、こんな、わけのわからないてすとをしようとするのだろう。
彼らの本当の狙いは、何なのだろう。
もしかしたら、このテストには、正直に答えてはいけないのかもしれない。
というのは、聖司をいう人間を大きく捉えている印象的な描写だったのではないでしょうか。
物語としては完璧なのではないでしょうか。
物語の推移としては、テストのカンニング、その防止攻防戦、男子生徒の退学を巡るその方法、修学旅行、校長と鳥居教諭との確執とその過去、女生徒の洗脳、そして、全ての出来事からの蓮見への疑惑など、読み所満載。
全てが全てにおいて面白く、不気味でした。
下巻
で、下巻。
構成としては蓮実の正体に気づいた男子生徒と、蓮実のアメリカ時代。
そしてメインの文化祭の準備で宿泊することとなった学校。
ネタバレですが、気づいた生徒の殺されたかがまたなんと言いますか、無慈悲。
危険に足を踏み入れたってのもあるのですが、近寄っちゃいけない闇もあるってことを思いました。
そして下巻の3/4を占める、夜の学校。
読み終えたあとから思い起こすと、こうはんちょっとダレたかも。
上巻がいい感じだったのに、下巻は「ハント」そのものに描写ばかりで、ちょっと残念。
残念といえば、出てくる下鶴刑事。もうちょっと積極的に絡んでくるのかと思っていたのですが、あんまりでした。
学校という、いわば特殊な世界だったので、あえて絡ませなかったのでしょうか。
しかしながら、犯行が明るみになった後の蓮実の開き直り方に対し恐怖を覚え思う、「こいつはもう次のゲームを始めている」というフレーズは印象的でした。
それにしても圧倒的な筆力でこんな話を創り上げる貴志祐介氏には、ただただ賞賛。
肩透かしを食らうのは解っているのですが、怖いもの見たさも有り、映像化された劇場版をちょっと見てみたいかもですね。